仮想通貨のFUDとは?どのようなときに使われるのかその狙いや実例を紹介

2018.09.07 (金) 17:00
仮想通貨のFUDとは?どのようなときに使われるのかその狙いや実例を紹介

仮想通貨の取引をしていると「FUD(Fear・Uncertainty・Doubt:恐怖・不確実・疑問)」という言葉を聞くことがあります。FUDは、もともと仮想通貨だけで使われるものではありません。広い業界で、マーケティングの手法として使われている言葉です。

この記事では、FUDとは何なのか、また、どのような狙いがあるのかを、実例を交えながら解説していきます。

 

1 FUDとは?

FUDとは?

FUDとは、簡単にいえば「悪い噂」のことです。Fear(恐怖)、Uncertainty(不確実)、Doubt(疑問)という3つの単語の頭文字をつなげたもので、「ファド」や「ファッド」、「エフ・ユー・ディー」と読まれます。仮想通貨の場合は「FUDによって、価格が暴落した」「あの情報はFUDだった」というような使い方をします。

いずれもネガティブなイメージのある単語ですが、FUDの目的はこれによってネガティブイメージを植え付け、不安や恐怖を煽ることにあります。ユーザーの恐怖心や疑問などを煽って、行動をコントロールすることで、仮想通貨の価格を調整したり、ユーザーの取引を制限したりすることができます。

このように、FUDにはユーザーの行動をコントロールする力があるため、仮想通貨の世界ではFUDが使われることがたびたびあります。

 

2 FUDはマーケティング戦略のこと

FUDはマーケティング戦略のこと

仮想通貨で使われることの多いFUDですが、FUDはもともと仮想通貨業界のみの言葉ではありません。

前述したようにFUDは、悪い噂で人々の恐怖心や不安を煽る手法で、マーケティング戦略のひとつとして、政治やPR活動、プロパカンダなど、幅広い分野で使われています。

もともとはアムダール社の創業者であるジーン・アムダール氏が、自身が退職したIBM職員の営業姿勢を指摘して述べたものです。

 

2.1 人の不安を煽るFUDの仕組み

FUDが広く使われるのは、人はポジティブな情報よりもネガティブな情報に動かされるといわれているためです。

人は疑問や不安を解決したい、恐怖から逃れたいという願望を持っています。

この疑問や恐怖を植え付ける言葉で、疑問を解決したい、そうなりたくないと思わせることで、行動を起こさせます。

一方、プラスのことに対しては、人はあまり期待をしていないといわれます。

「今より悪くならなければよい。よくなればラッキー」程度で、現状維持が保証されれば問題ないという人が多いためです。

現状にある程度満足している人は、そこから無理にプラスの方向に動きたいとは思わないのです。

例えば、老後のための積立式金融商品を銀行から紹介されたとします。

金利が高い、月々無理のない金額で積立ができるといわれても、今の生活で十分だと思う人は、商品を購入したいとは思いません。むしろ、毎月支払う金額を、マイナスに感じてしまうでしょう。

しかし、「老後を生活するには、これだけの大金が必要です。用意できないと、生活ができなくなります。だから今から準備が必要です」といわれると、老後が不安になって購入してみようと思うようになります。こうした手法が、FUDと呼ばれます。

 

2.2 よく使われるFUDの例

FUDはインターネット広告でもよく使われています。特に多いのは、美容や健康、警備に関する広告です。

健康や美容に関しては、アンケートや公式のデータを持ち出して「がんのリスクが高まる」「男性に嫌われる」などの言葉を押し出したFUDがよく見られます。

警備の場合は「こういう家は空き巣に入られやすい」「一人暮らしのお年寄りにはこうしたリスクがある」という言葉を使い、ホームセキュリティや高齢者の見守りサービスの購入につなげる事例があります。

 

3 仮想通貨におけるFUDの狙い・実例

仮想通貨におけるFUDの狙い・実例

仮想通貨におけるFUDの狙いは、主に仮想通貨の価格操作です。

リアルタイムで価格が変動する仮想通貨は、FUDの影響を受けやすいといわれています。それは、まだ仮想通貨自体が新しい通貨であり、情勢が不安定で悪い噂に引っ張られやすいことが原因です。

インターネットを使った世界規模の取引であることも、一気にFUDを広める要因になっています。

例えば、「仮想通貨Aはシステムに脆弱性がある」というFUDがあれば、多くのユーザーはハッキングの不安から、仮想通貨Aを早めに売却して取引を中止しようとします。

そうなれば、仮想通貨Aの価格は下がってしまうでしょう。

こうしたFUDは、社会現象にまで発展することもあります。これまでに起きたFUDをいくつかご紹介します。

 

3.1 バイナンスにまつわるFUDの事例

バイナンス(Binance)に関するのFUDは、仮想通貨ユーザーの間では比較的有名でしょう。

バイナンスとは、多くのユーザーを抱える大手の仮想通貨取引所です。

2018年2月、一部同期にトラブルがあったため、バイナンスは緊急メンテナンスを行いました。これに対し投資家のジョン・マカフィー氏が、自身のTwitterで「バイナンスが破綻する」とツイートしたのです。

マカフィー氏は、セキュリティソフト・マカフィーの生みの親であり、非常に影響力のある人物です。そんな人物が「バイナンスが破綻する」と発言したことは、多くのユーザーを混乱させました。

最終的にメンテナンスは終わり、通常どおりに取引は行われるようになりましたが、メンテナンスが終わるまで、インターネットではさまざまな憶測が飛び交いました。マカフィー氏はこの件に関して、故意ではなかったが軽率な発言をしたと謝罪しています。

また、2018年7月にも、バイナンスは仮想通貨での異常取引があったとして、緊急メンテナンスを実施しています。

これも結果的にFUDとなったため、バイナンスでは「SAFU(Secure Asset Fund for Users:セキュア・アセット・ファンド・フォー・ユーザーズ)」という保証システムを用意することにしています。

 

3.2 各国規制のFUD

世界的に仮想通貨が注目され、各国では仮想通貨に関する法整備が進められています。こうした規制の中にもFUDがありました。

特に多かったのが「国で仮想通貨が全面禁止になる」というFUDです。例えば、韓国やインドでは「仮想通貨が全面規制」というFUDが流布していました。

しかし、韓国は本人確認の規制を行っただけで、さほど厳しい規制は行っていません。

インドも仮想通貨のリスクを取り上げた発言はあったものの、仮想通貨自体は禁止せず、違法な取引やICO(Initial Coin Offering:イニシャル・コイン・オファリング)を取り締まる程度に留まっています。

実際に仮想通貨を禁止している国は、中国やネパール、インドネシアなどの一部の国のみで、ほかの国は規制はあっても、全面禁止とはなっていません。

 

3.3 コインチェックのFUD

日本人の中で印象に残っているFUDといえば、コインチェックのFUDだと思います。

2018年1月、コインチェック株式会社が攻撃を受け、当時の金額にしておよそ580億円の仮想通貨が盗まれる事件が発生しました。

日本では過去にない大金が盗まれたことにより、一時期「コインチェックは破綻するため、預けていた財産は戻ってこない」というFUDがありました。また、この事件によって仮想通貨取引を行ったことがない人に「仮想通貨は危険」というイメージを持たせることにもなりました。

しかし、実際には盗まれた仮想通貨は2018年3月にきちんと補償されています。

コインチェックも一時期業務を停止していましたが、破綻はしていません。盗まれた金額があまりにも大金だったために流れた噂でしたが、これもFUDといえるでしょう。

 

FUDは情報があっても焦らずに、それが本当に正しいのかを判断することも必要です。

特に仮想通貨業界は、本当の情報が掴みにくいため、FUDに振り回されることがたびたびあります。冷静になって、公式の発表を待ったり、パニックにならずに自分なりに調べてみたりすることが大切です。

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